人類の進化の限界
感想と思ったことを適当に。
- 作者: ドナ・ハート,ロバート W.サスマン,伊藤伸子
- 出版社/メーカー: 化学同人
- 発売日: 2007/06/28
- メディア: 単行本
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ところで、組織と文明の力で、怖い動物さんたちをほぼ制圧し、ついでにほとんどの病気も駆逐した人類ですが、将来はどうなるのか気になるところです。
生物の進化を支えてきたのは、間違いなく圧倒的な淘汰圧ですが、もはや人類に掛かっている淘汰圧は、妊娠時の異常による淘汰=流産程度しかありません(10〜20%)。子供を作る一般的な上限の年齢を40とすると、資料を見る限り日本人であれば98%は生きているので、一旦生まれてしまえばほとんど淘汰されません。(一応不妊は淘汰とも考えられますので、考慮する必要がありますが)
結婚できないとか、社会的な淘汰圧が働いている可能性はありますが、その辺の事情をざっくり切り捨てれば、今の人類、少なくとも日本人が生物的に進化する要因はほとんどない気がします。
少なくとも日本人と断りを入れたのは、他の場所で進化している可能性が高いためです。
今はアフリカの一部でHIVが猛威を振っていますが、HIVの致死率は100%ではなく、人によっては発症が非常に遅いという場合もあります。これが遺伝子に起因する場合、キャリアが生き残って子孫を残せればHIV耐性を獲得する進化をしたことになるからです。何も手を打たなくても100年もたてば「アフリカでは」HIVは無害なウィルスになってしまうかもしれません。
HIV以外にも内戦による暴力が生死を分ける状況では、体力や俊敏さ、他にも色々な側面がある淘汰圧が働いていると思われます。
人道的に見て、一部のアフリカの状況は悲惨ですが、状況が悲惨であればあるほど進化が加速されるというのは、生命の本質と人道主義が相容れないものであることを示唆しているのかもしれません。
一方淘汰圧の働かない生物がどのような結末をたどるのか、試しに自己流で簡単な思考実験をしてみると、
- 社会の中に存在している遺伝子は、複製を繰り返すごとにわずかなノイズが載る
- 淘汰圧が働く場合、ポジティブなノイズは広がり、ネガティブなノイズは取り除かれやすい
- 淘汰圧が働かなくなれば、ノイズは遺伝子のプールに蓄積し続け、ひたすら多様になる
- ネガティブなノイズは、人間が持っているはずの機能を失わせる
- ポジティブなノイズは、有益ではあるが優位性を持たないので広がらない(ネガティブも)
- たぶん機能を生み出すよりも、壊す方が簡単。(ネガティブな変化が起こりやすい)
(人類の進化が加速しているという話もありますが、淘汰圧が働いてない状況は考慮されていないようです。)
日本人の様な先進諸国の将来は、進化のベクトルを失い、今まで無かったような病気や障害が次々と表れる世界になるのか、熱ノイズの彼方に消え去ろうとする遺伝子をバイオテクノロジーで再建し続けるか、どちらかを選ばざるを得ない状況になるかもしれません。
問題が表面化するのはまだしばらく先でしょうが、1000年も先ではない気がします。
その時代に日本人の「遺伝子」は生き残ってるんでしょうか?
優生学は復活しているのでしょうか?