失われていく既得権

最近は景気は悪いは、物価は上がるわと、ろくなニュースが無いですが、給料も………上がりませんね。
というわけで政策が悪いとか、もっと企業は金寄越せという意見もあるわけですが、正直どうなのよと、考えてみるわけです。



調べた範囲内では、だいぶ前に分裂勘違い君劇場さんのエントリー
「他人の生産性が向上すると自分の給料も増えるのか?」を中学生でもわかるように図解してみました
で、書かれている意見には大筋賛成で、日本全国津々浦々の人がトヨタやら松下やらの極めて競争力の高い企業の恩恵を受けていることは間違いありません。
上のリンク先には明記されていませんが、どんな田舎の「トヨタから金なんて回ってこねーよ」という人でも、為替という形で恩恵を被っています。大企業が異常なまでの生産性で外国から稼ぎあげる利益がなければ、資源もろくにない日本が1ドル100円近いレートを維持できるはずもなく、仮に何か起こって輸出産業が全滅したりすれば、昔の1ドル360円に逆戻りということも考えられることです。そうなったら、今のガソリン価格どころの騒ぎではなく、ほとんどの人の生活水準は崩壊し、食べ物にも困る状況になります。食糧自給率は40%しかないですから、外貨が無ければ食べ物は米で我慢するしかありません。カロリー足りるんでしたっけ?
ともかく輸出産業が今以上に利益をどんどん上げるようになれば、日本人が相対的に豊かになることは確かです。


でも、そうはいっても大企業が賃金を上げずにピンハネして内部留保ためこんでいるのじゃないのかという見方もできます。
実際、毎年の企業の内部留保の推移を見ると、300兆円以上の結構な金額を貯め込んでいて、ちったあ俺にも寄越せよという気分になります。
そこで、みんなで仲良く内部留保を分けたらどうなるかを計算してみます。
毎年約10兆円くらい貯まっていて、労働者が日本に5000万人いるとみなすと、一人毎年約20万円分配されます。ということは、みんなで分ければ確かに年収が20万増えるんですが………それだけなんですよね。毎年、20万のゲタを履いたとしても、やっぱり給料は減り続けるわけで、先行き暗いなーという状況は変わりません。何でこんなに将来に希望がもてないんでしょうか。


おそらく、今の日本人は失われつつある既得権と戦っているといえるでしょう。
確かに企業は、今も利益を上げ続けていますが、以前と違うのは前よりも「公平に」利益が分配されるようになったことです。確かに内部留保ピンハネですが、それは本質ではありません。
90年代以降、情報が行き渡ることで、消費者は品物やサービスが同じであれば一番安い店からものを買う傾向が強まりましたが、企業も同様に、能力が同じであれば、安い労働者を雇うことが選択肢として可能になりました。
今、日本人として年収200万円の給料は最低水準ですが、世界全体を見回してみれば、年収200万円ももらえる人間はわずか10%しかいません。本当に世の中公平なら、普通の人=「上位50%」の年収は10万円(!)しか無いはずなのにです。


というわけで、あんまり信じたく無い気分にさせられますが、国家という障壁(為替、言語、法律、etc.)に守られてきた日本人は、障壁の解体により、世界の平均に近づいていくことになります。日本にとっては危機的状況ですが、既得権なんて他人から見たらゴミ以下ですので、他の国に頼ることもできません。ついでに世界人口は増え続けていますので、平均的なリソースの分配は減る一方(=より一層の貧乏化)です。


再分配を求めて国や企業に不満をぶつけても、そこにはたいしたお金は埋まってません。1億人で分けたら数十兆円位あってもたかがしれています。今まで日本という壁に守られて、驚異のカンバン方式が作り出すお金で、自分の能力に見合わない贅沢な暮らしをしていたことに気づかなかっただけです。


結局、この先自分の給料を保証してくれるのは自分の能力だけということです。
………きつー