定量評価という技能

最近は(といってもすっかり出遅れてますが)、事故米とか汚染米とかいうものが、
世の中を騒がせていて、事務次官がクビになったり、大臣が辞めてみたり色々大変なようです。


2chあたりでも事故米のせいで関西に肝臓がん大発生?とかいうような情報が挙げられてたりして
ちょっとした騒ぎになっていたり、そんな状態をウォッチしていました。


私もメタミドホスはともかく、アフラトキシンB1が最強の発ガン毒であることは、遠い昔に読んだ

毒物雑学事典―ヘビ毒から発ガン物質まで (ブルーバックス)

毒物雑学事典―ヘビ毒から発ガン物質まで (ブルーバックス)

毒物雑学事典の記憶にあったので、そんなものを流通させてしまったことには驚きました。
というわけで、つい情報を当たりたくなる癖で、農水省に上げられていた資料と、簡単にWikipediaなどで調べてしまいました。
とりあえず数十分ほどで調べた範囲で見る限り、リスクは皆無とは言えないけれど、事故米由来のガンにかかる心配をして寝不足になるよりは、睡眠不足で交通事故に遭う確率の方が多いかという結論になったので、とっとと寝てしまいました。
(交通事故死は死因の1%程度ですが、アフラトキシンはかなり大きく見積もっても食べた人1万人あたり1人程度の発生率なので)*1


この辺のことは、NATROMさんや、ニュースな待合室さん市民のための環境学ガイドさんといったところで大体の概算をして頂いているので、いまさら私などがどうこう言う話ではないのですが、この件に関していえば、リスクをある程度定量評価している情報ソースはごくわずかであり、少なくとも一般的に大手のマスコミと呼ばれるところからはここくらいでしょうか?


それ以外に私が見た中の大半の情報は、毒が入っているという定性的な情報とそれに対する直感的な反応が多かったといえます。もちろん私もこれについて情報発信した立場でもないので偉そうなことは言えないのですが、改めて考えてみると情報を定量して評価するというのは、かなり希少な技能のように思えます。
技術系の仕事をやっていると、定性的な情報というのは、物事を単に知っているというだけであり、それを元に判断を下すとしっぺ返しを食らうことが多く、定量的な情報をそろえてこそ、ある程度物事が判ってきてまともな判断ができる(とはいってもそれでも間違うことは多い)ということはしばしばあることですが、世間一般ではそういった仕事は、あまり評価されないのかも。


というわけで今の日本とマスコミは駄目だ、とか言い出せればここも立派な?憂国ブログなのですが………


実は本当に書きたかったのはたまたま見つけた、あまりに無敵で変な18世紀のロシアの将軍アレクサンドル・スヴォーロフについて書かれた、La patrie en dangerさんエピソードについてだったりします。
このページに出てくる「変人元帥」スヴォーロフの「意味不明な質問」(カスピ海には何匹の魚がいるのか? etc.)という話があるんですが、これを読んだときに、スヴォーロフはおそらく部下の臨機応変定量評価の能力、を推し量るために聞いてたんだろなぁと思ったのを書きたかったんです。
確かにこういう会話ができる人はわずかにいて、今まで全部で何t位飯食ってきた?とか聞くとざくっと答えが返ってきます。そういう人はやはり全体を大づかみに理解する能力が高くて、おおざっぱな指示で仕事を任せることができます。従ってこういう質問で会話が成り立つというのは結構貴重な技能の片鱗と言えそうです。


スヴォーロフの質問は単なる変人の気まぐれのようにも聞こえますが、その言葉の裏にはかなり計算尽くの知性を感じます。それと同時に究極の定量評価が求められる職業というのは、やはり軍人なのかなと思ったりしてみました。

*1:当然ですが被害者の有無と、リスクを社会にばらまくことで利益を得ることは全く別で、この件については犯罪として、何か怪しげな農水省共々厳しく調査されるべきです